奇想天外な温泉がズラリ。面白すぎる全国の「秘湯中の秘湯」ガイド本
世の中にはとことん温泉を愛する方々もいるそうで、中には全国各地の秘湯中の秘湯を探し回る温泉マニアもいるようです。メルマガ「安曇野(あずみの)通信」著者・アンクルさんもその一人なのですが、そんな彼が絶賛する秘湯本があるそうです。面白すぎる秘湯の数々…ちょっと覗き見してみましょう。
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面白すぎる「秘湯中の秘湯」
私・アンクルは温泉通で、この10年来、信州中心に実際の入湯記をホームページに紹介、温泉ライターを自認しているが、小説家エッセィスト・清水義範氏の作品「秘湯中の秘湯」というのが奇想天外で面白い。
日本全国各地の秘湯中の秘湯を紹介しているのだが、実はこれは秘湯というよりとんでもない温泉ばかりなのである。
秋田県にあるという風呂湯温泉は、よく蛇も入りにきていて、時には湯船が蛇で覆われていて、その蛇をかき分けて入らなければならない。
山形県の迷子谷温泉というところは、谷底にあるという露天風呂へ行くのはいいのだが、行きはよいよい、帰りは怖い。山道が複雑に入りくんでいて迷子になり、宿に容易にたどり着けない。
宮城県にあるという死急(しにいそぎ)温泉には、その名前にもぎょっとするが、温泉成分にかなり強度の硫酸を含んでいて、長時間入っていると体が溶けてしまう。慣れた人でも1分がせいぜい。よく見ると湯面には昆虫や小動物の死骸が。宿のすぐ横はごていねいに墓場になっている。
福島県の湯気蒸(ゆげむし)温泉というところは、ちょっと道路工事をするとそこから高温の温泉が噴出するというほど。そのすごい噴出量のため街全体が湯気のモヤにすっぽり覆われている。
群馬県の空中(くうちゅう)温泉は傑作である。この温泉の湯船は文字通り高い空中にある。杉の巨木の最初の枝の窪(くぼ)みに温泉がわき出している。温泉客は木にかけられたハシゴを登って湯に入る。見晴らしのよい空中の
温泉の味わいは格別とか。
山梨県の極道(ごくどう)温泉は、その昔の信玄の隠し湯のひとつ。鉄砲傷に抜群の効能があり、この湯に浸かっていると体にめり込んだ銃弾も体外に排出されるという。故にこの温泉は当世では一般人には用はなく、もっぱらその筋専用御用達の温泉ゾーンなのである。
わが長野県には泥沼化(どろぬまか)温泉というのがある。泥の温泉なのだが、泥は泥でも底無しの泥沼温泉。そのままではズブズブと入っていってしまい二度と地上の空気を吸うことはできない。
そのため入浴客は腰から脇の下にロープをしばりつけ、湯の際の木にしっかり結びつける。なお足首にロープを結んだりするともう大変。逆さづりになって復元することは無理になるという。木に結び付けられたロープを切るなどは御法度。
ところでこの温泉は、長野電鉄寝返(ねがえ)り駅からバス30分、土肥中(どいなか)から道に迷ってあてどなくさまようこと2時間にのところにあるという。JR長野駅をターミナルとする長野電鉄などと書いてあるので、思わず地図帳も持ってきてまじめに探してしまった。
無論、寝返駅という駅は長野電鉄には存在しないし、従ってこれらの温泉が作者の空想の温泉、温泉のパロディ版だということがわかる。
そのほか大都会の真ん中に湧出した恥晒(はじさらし)温泉(愛知県)、シャワーのように温泉の雨が降る湯雨(ゆあめ)温泉(大分県)、北極に近いシベリアにあるオユ湖温泉というのは、湖全体が温泉というすごさ。それぞれの温泉には温泉ガイドブックのように、交通・泉質・効能・宿も面白おかしく紹介されていて楽しめる。
(注)この本は空想温泉ガイドブックです
ということで、残念ながら全国どこを探してもこんな秘湯はないのですが「もしかしたらあるかもしれない…」と思って検索してみた人もいたりして…はい、私です…。それでも、温泉大国・日本らしい空想温泉ガイドブック、似たような温泉は全国を探せばあるのかもしれませんね。
ちなみに本記事トップの画像は、大分県にある地獄温泉のひとつ「血の池地獄」。実在しますが深さ30m温度78度、とうてい人が入れる温泉ではないのでお気をつけくださいね。
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